強度と難易度の違いって何?


「強度」と「難易度」の違いを正しく理解する

強度」はフィジカルトレーニングで多く使われ、「難易度」はファンクショナルトレーニングで使われます。

筋力トレーニング(ストレングストレーニング)や持久力トレーニング(エアロビックトレーニング)など、身体の性能を向上させるトレーニングを一般的に「フィジカルトレーニング」といっています。

ファンクショナルトレーニングは、日本語訳すると「機能的トレーニング」といいます。フィジカルトレーニングで高めた身体を動作精度高く使えるようにするためのトレーニングがファンクショナルトレーニングです。

脚の筋肉を増やしたり筋力を高めるのがフィジカルトレーニング、その培った筋肉を使って、不安定な場所でも片脚で安定して立てるようにするのがファンクショナルトレーニングです。

筋力トレーニングの場合は使用するダンベルやバーベルといった重量物の「重さ(重量)」が強度になり、持久力トレーニングでは「心拍数」や「走速度」が「強度」になります。

筋トレを何セットするとか、週に何回やるというのは、トレーニング量や頻度になります。持久力トレーニングの場合だと、何分走るとか週に何回走る、というのがトレーニング量や頻度になります。

ファンクショナルトレーニングは「難易度」を指標にする

ファンクショナルトレーニングの場合、例えば自重でスクワットの動作をしている時は、両足で自分の体重を支えていて、その両足の間に常に重心があるので安定して運動することが出来ます。

重心はただ上下動しているだけなので、難易度は低めです。

脚を横に一歩踏み出すサイドランジをした場合、横方向に重心が移動するので、それぞれの足にかかる体重の割合は変化し、体幹や上体を安定させるためにスクワットよりも多くの筋肉を使います。

スクワットとサイドランジを比べた場合、重心の移動が伴うサイドランジの方が「難易度が高いエクササイズ」となります。

サイドランジの方が難易度は高い

スクワットもサイドランジも自分の体重が負荷なので、負荷は変化していないので、強度は同じです。

サイドランジをしてすぐにフロントランジをするようなエクササイズでは、重心の移動が左右と前後2方向になります。

この場合、2つの動作方向が組み合わさったエクササイズになりますので、単一方向に重心移動するサイドランジよりも、さらに「難易度の高いエクササイズ」ということになります。

このように「難易度」の場合は、何かと比較して設定している負荷になります。

「強度」のように数値化されないので、少しわかりにくいですよね。

フィットネスクラブやトレーニングジムのインストラクターさんやトレーナーさんなど、いわゆる「専門家」の方に、ファンクショナルトレーニングの研修や講習をする機会がありますが、フィジカルトレーニングベースでサポート業務をされている方で、負荷を「強度」としてしか捉えていない方は、最初はこの「難易度」という負荷設定に戸惑われます。

専門家でも戸惑う「難易度」という視点ですが、数値化出来ないのですが、指標はあるので、その指標をしっかり理解していただければ、お一人でも正しくファンクショナルトレーニングを実施していただけるので、以下その指標を説明します。

動作方向を考える

まず1つめは動作方向です。

カラダが移動する方向=重心が移動する方向は前後・左右・上下の3方向のみです。まずはこの3つの動作方向を考えます。

前後だけ、左右だけ、上下だけの1方向の動作でも、上下運動は左右同じ動作なので、一番難易度が低い動作です。椅子に座る・立ち上がる、スクワットや腕立て伏せ、シットアップ(腹筋運動)などが該当します。

左右方向の動作と前後方向の動作は1方向であっても、左右の動きが別々になるので、上下方向の動作より少し難易度が上がります。

歩く・走る、サイドランジやフロントランジなどの動作が当てはまります。

前後と左右、左右と上下など2方向組み合わさるとより難易度があがり、3方向が組み合わさった動作になれば、より「難易度が高い動作」ということが出来ます。

プラス、それぞれの動作に「回旋」という動作が加わると、より難易度が高くなります。

ファンクショナルトレーニングをするときには、まずこの「動作方向」を考えてエクササイズを選び、正しいフォームでトレーニングすることが極めて大事になります。

7つの基本動作

2つめは基本動作とその組み合わせ。

ファンクショナルトレーニングには「7つの基本動作( 7 Basic Movements )」というものがあります。

  • コア&ヒップ
  • ヒップヒンジ
  • スクワット
  • ランジ
  • プル
  • プッシュ
  • ツイスト

概ね日常生活動作やスポーツでの動作は、この7つの動作の組み合わせでなりたっています。7つの動作のうち、ある特定の動作に問題があれば、その動作を改善することにより、各関節や筋肉が本来持っている機能性を発揮してスムーズな動作をすることが出来ます。

ファンクショナルトレーニングであるバトルロープエクササイズは7つの基本動作を全て含む難易度の高いエクササイズ

ファンクショナルトレーニングはこの7つの動作が適切に行えるかをチェックし、それぞれの動作の質的向上を目指すトレーニングになります。

そして、7つの基本動作を2つあるいは3つと組み合わせて行うことで、動作が複雑になりエクササイズの難易度が高くなる、ということになります。

普段、皆さんが行っているトレーニングはどんなトレーニングでしょうか?

普通のトレーニングジムやフィットネスクラブに通われてトレーニングしている方は、ほとんどが筋力トレーニングや持久力トレーニングを中心とした、フィジカルトレーニングだと思います。

ファンクショナルトレーニングは器具がなくてもトレーニング出来るので、部屋トレでも充分効果を出せます。その際には、「難易度」を意識してトレーニングすると、その効果も大きく変わってきますので、まずは「動作の方向」だけでも意識をしてみてください。

特にトレーニングマシンをメインにトレーニングしていると、動作方向は前後もしくは上下が多くなり、左右が少しだけ、となっているはずです。

回旋動作は体幹を捻るマシンくらいしか無いので、マシントレーニングのみだとほぼ回旋動作をしていないことになりますね。

ファンクショナルトレーニングに関する詳しい説明は、「S-CHALLENGE トレーニングメソッド」で解説していますので、興味がある方はこちらもチェックしてみてください。

まとめ

筋力アップや持久力向上を目的としたフィジカルトレーニングでは「強度」を負荷として考えますが、動作の質的向上を目指すファンクショナルトレーニングでは「難易度」を負荷として考えます。

フィジカルトレーニングもファンクショナルトレーニングも、トレーニングの目的が異なり、そして両方ともとても重要なトレーニングとなります。

トレーニングの目的や体調などによって、強度重視して難易度は抑え気味、逆に難易度を高くして強度控えめ、などフィジカルトレーニングやファンクショナルトレーニングの配分を調整をして、トレーニングをすすめていってください。

飯島 庸一

S-CHALLENGE Training Program Works 代表/フィジカルトレーナー ファンクショナルトレーニングと筋力トレーニングを統合したトレーニングメソッドで、アスリートやスポーツ大好きな社会人クライアントの動作と機能を高めるサポートを展開。日本スポーツ協会 公認アスレチックトレーナー(JSPO-AT)、全米スポーツ医学アカデミー 公認コレクティブエクササイズスペシャリスト(NASM-CES)

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