2024年、スキーオフトレシーズンも終盤。今回のスキーオフトレワークショップは、今季のワークショップでテーマとして取り上げてきた様々なトレーニング要素を融合させた、「マルチアングルトレーニング」を行いました。
「マルチアングルトレーニング」とは、さまざまな角度や視点からアプローチするトレーニングです。スキー滑走では、筋力(ハイパワー)や持久力(ミドルパワー)、エアロビック能力(有酸素能力)など基礎的なフィットネスのほかに、姿勢コントロール、機能的動作、バランス能力、股関節のモビリティ&フレキシビリティ、各関節の連鎖性、敏捷性(アジリティ)、斜面への適応能力など、さまざまな運動能力が必要です。
スキー滑走中のターンの動きは非常に複雑で、多くの筋肉群やバランス感覚が求められます。良いコンディションでシーズンインに備えるためには、前述したスキーに必要な様々な運動能力を一つの側面に偏らず、全体的にトレーニング(マルチアングル)するアプローチが効果的です。
今回のスキーオフトレワークショップでは、まずモビリティ&フレキシビリティのチェック、および改善アプローチ、バランスボールエクササイズ、スライダーエクササイズ、ラダーエクササイズ、斜面でのポジションコントロールトレーニングなど、春からワークショップで行ってきたトレーニングを包括的に再構築し、複数の要素を組み合わせて展開することで、新たな気づきや課題整理に繋げてもらいました。
特にラダーエクササイズなどは、フラットな状況で足運びのルール(ステップワーク)を憶えてもらい、それを階段の段差の状況下で適切に体幹をコントロールしながら、憶えた足運びを再現するような脳トレを伴ったトレーニングも体験して頂きました。
足運びを考えながら、自分の重心を適切にコントロールしたり、体幹を使って姿勢を制御するようなことは、脳にもストレスをかけることになり(マルチタスク)、スキーヤーに求められる運動要素を非常に多面的に鍛えることが出来ます。このようなマルチタスクを伴ったトレーニングは、2022年スペイン・バレンシア大学のプロサッカー選手を対象にした研究において、運動機能全体のパフォーマンス向上に繋がることが明らかとなっています。
また怪我予防の観点でも、2つの課題を同時に行う体幹を使ったトレーニングは転倒リスクの低減に繋がることも2021年パキスタン・ラホール大学のレビューで判明しています。
スキーヤーの滑走パフォーマンスを高めるためには、基礎的なフィットネス向上も非常に重要ですが、カラダの使い方(調整力=コーディネーション)能力を高めていくことも、非常に重要と考えています。
特に春から継続的に参加されている方々は、非常に姿勢や福合動作の協調性が高くなっていて、良いフィーリングでシーズンイン出来るのでは、と感じました。
今回も沢山のオフトレ大好きスキーヤーにお集まり頂きました!
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。
参照エビデンス
Effects of intensive multiplanar trunk training coupled with dual-task exercises on balance, mobility, and fall risk in patients with stroke: a randomized controlled trial
脳卒中患者の体幹トレーニングと二重課題を組み合わせた集中的なトレーニングがバランス、移動能力、転倒リスクに与える効果:無作為化比較試験
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34812070/
Brain Endurance Training Improves Physical, Cognitive, and Multitasking Performance in Professional Football Players
脳持久力トレーニングがプロサッカー選手の身体能力、認知能力、マルチタスク能力を向上させる
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36370703/
※次回以降の「スキーオフトレワークショップ」のスケジュールはこちら
https://www.s-challenge.com/workshop/
S-CHALLENGE Training Program Works 代表/フィジカルトレーナー
ファンクショナルトレーニングと筋力トレーニングを統合したトレーニングメソッドで、アスリートやスポーツ大好きな社会人クライアントの動作と機能を高めるサポートを展開。日本スポーツ協会 公認アスレチックトレーナー(JSPO-AT)、全米スポーツ医学アカデミー 公認コレクティブエクササイズスペシャリスト(NASM-CES)