ターンパフォーマンスを高める、スキーオフトレシーズン追い込み筋トレ戦略

スキーシーズンも近づいてきて、より短期間で最もターンパフォーマンス向上に直結する筋力トレーニングの方法を知りたい方も多いと思います。最新の研究結果をもとに、ターンパフォーマンスを高める筋トレのコツ、短いトレーニング期間でも、より高い筋力アップができるトレーニングの方法を解説します。


スキーヤーに重要なのは「筋肉を伸ばしながら出力する」こと

筋肉の収縮の仕方には大きく分けて三つの筋収縮タイプがあります。筋肉が伸びながら力を発揮する遠心性(エキセントリック)、筋肉が短くなりながら力を発揮する求心性(コンセントリック)、筋肉が長さを変えずに力を発揮する等尺性(アイソメトリック)です。

スキーのターン動作では、筋肉が伸びながら力を発揮する「遠心性収縮」が重要な役割を果たしていることがスウェーデンのスポーツ健康科学大学の研究(Moberg, 2022)で明らかになりました。エリートアルペンスキーヤーを対象にした測定では、全ての遠心性速度(筋肉が伸びる速さ)で有意に高い筋力を示しました。

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さらに、エリートスキーヤー達は、膝角度20°-60°での相対的な等尺性筋力(筋肉の長さが変わらない状態での力発揮)が特に高く、25°で最も顕著な差が見られました。また、低速での求心性筋力(筋肉が縮む動き)も優れていることが分かりました。

これらの結果は、スキーヤーが遠心性トレーニングと等尺性トレーニングを重点的に行うことの重要性を示しています。スクワットエクササイズを例にすれば、重力に任せて素早くバーベルを下げるのではなく、重力に対抗しながらゆっくりとバーベルを降ろす動作を意識することが、遠心性トレーニングになります。

また下がった位置で重量に対抗した姿勢の保持を意識することで、等尺性筋力も鍛えることができます。ターン中の姿勢保持や力の伝達効率を高めるためには、遠心性や等尺性トレーニングが効果的です。

オフトレシーズンの追い込みには、週4回の短時間高頻度トレーニング

2024年にノルウェー科学技術大学が発表した研究「High-frequency resistance training improves maximal lower-limb strength more than low frequency」によると、週1回の長時間トレーニングよりも、週4回の短時間トレーニングの方が下半身の最大筋力向上に効果的であることが分かりました。

研究結果の詳細

  • 週4回のグループ:スクワットの最大重量が15kg増加
  • 週1回のグループ:スクワットの最大重量が8kg増加

この差は統計的に有意であり、高頻度トレーニングの優位性を示しています。週に1回、60分のトレーニングよりも15分を4回実施した方が、累計のトレーニング時間が同じであっても、挙上できる総負荷量を増やすことが出来ます。

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高頻度トレーニングが効果的な理由

  1. 疲労の軽減:短時間のトレーニングでは疲労が少なく、より重い重量で運動できます。
  2. パフォーマンスの一貫性:15分×4回のトレーニングでは、毎回高いパフォーマンスを維持しやすくなります。
  3. 動作の習熟:同じ動作を頻繁に行うことで、体の動かし方がスムーズになり、筋肉をより効率的に使えるようになります。

スキーオフトレシーズンも終盤になり、「追い込みをかけたいけど、トレーニング時間を増やせない」という方は、是非トレーニング時間を短くして、高頻度でトレーニングするやり方に切り替えて、さらなら筋力アップを目指してください。

スキー専門プロトレーナーがオススメする下半身エクササイズ

スキーに必要な下半身の筋力を効果的に鍛えるために、スキーの「特異性」を考慮して以下のエクササイズを選んでみました。下記の4エクササイズを週4回のプログラムに組み込むことをおすすめします

ゴブレットサイドランジ

スキーは側方への重心移動動作が多いので、横方向の動きに対応する筋力を強化できるゴブレットサイドランジは、立位で体幹も強化出来るので、スキーヤーに非常にオススメのエクササイズです。

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デッドリフト

ハムストリングスや大殿筋、脊柱起立筋など背面の筋肉群を鍛え、ターン時の姿勢保持に役立ちます。

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スプリットスクワットまたはブルガリアンスクワット

足を前後に開いたスプリットスクワット(上)片脚で行うブルガリアンスクワット(下)は、片脚支持バランスを高め、アシンメトリー(左右非対称)動作を伴った筋力を向上させます。

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ヒップスラスト

ヒップヒンジ動作を伴いながら大殿筋とハムストリングスを強化し、パワフルなターン動作をサポートします。

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    これらのエクササイズを行う際の注意点

    • 低速での動作を意識し、等尺性収縮(静止)を意識的に取り入れます。具体的には膝角度20°-60°で時々静止し、等尺性の筋力発揮を意識します。
    • 遠心性(エキセントリック=ダンベルやバーベルを下げる)局面をゆっくりと行い、筋力と制御能力を高めます。

    トレーニングプログラムの例

    • 月曜日:ゴブレットサイドランジ
    • 水曜日:デッドリフト
    • 金曜日:スプリットスクワット(または隔週でブルガリアンスクワット)
    • 土曜日:ヒップスラスト

    上記のプログラム例には下半身の代表的なエクササイズであるスクワットエクササイズは含めていません。その理由は、スクワットは左右均等に加重する同側のトレーニング動作だからです。左右同じ動作だと高重量を扱いやすいので、スキーオフトレシーズン前半にはスクワットエクササイズは非常にオススメのエクササイズです。

    しかし、スキーのターン動作は交互に加重する動作が主なので、特にオフトレシーズン後半はランジ系エクササイズ(フロントランジ、リアランジ、サイドランジなど) を中心におこなう方が、スキーパフォーマンス向上に繋げやすいと考えています。

    また筋肥大を意識したトレーニングをターゲットにする場合は、「筋肥大を最適化するための3つのトレーニング変数とは?」の記事を参照してみてください。

    このようなプログラムを実践することで、スキーに必要な筋力を効率的に向上させることができます。ただし、急激なトレーニング量の増加は避け、徐々に頻度を上げていくことが大切です。また、十分な休養と栄養摂取を心がけ、オーバートレーニングを避けることも重要です。


    参考文献

    1. Sport specific strength in alpine competitive skiing: What characterizes alpine elite skiers? https://www.iat.uni-leipzig.de/datenbanken/iks/dsv-alpin/Record/4078913
    2. High-frequency resistance training improves maximal lower-limb strength more than low frequency https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ejsc.12055

    S-CHALLENGE Training Program Works では、完全オーダーメイドの個別化トレーニングプログラムの作成・配信サービス「プログラムサポート」を全国のクライアント様に展開しています。事前に提供していただいたトレーニング履歴や受傷履歴などの個人情報や利用可能なトレーニング環境、ライフスタイル、トレーニングおよび体力レベルに応じたプログラム作成をしています。適切なプログレッシブオーバーロードを個別プログラムに反映させながら、トレーニングの成果をパフォーマンス向上やカラダの機能的向上につなげています。「プログラムサポート」サービスに関するご質問・お問い合わせはお気軽にこちらのWEBフォームをご利用ください。

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