斜度への適応には「中殿筋」が重要な役割
2017年に異なる角度(15度・25度の傾斜板)における歩行時と片脚支持姿勢で中殿筋の活性化を測定した研究論文が発表されました。この研究によると、傾斜板の傾斜角を大きくすると中殿筋の筋活動が増加することのこと。
中殿筋(イラストの青色の筋肉)は股関節の側部&深部にある筋肉で、脚を開脚したり片脚でバランスを保持したりするのに非常に重要な役割があります。
この実験では歩行運動でも片脚支持姿勢でも「中殿筋」の筋活動のピークと平均値が有意に増加したということです。
脚の開脚動作や片脚支持バランスの調整に加えて、斜度に適応するために「中殿筋」は重要な働きをしています。
外傾姿勢は「股関節の外転・内転運動」
斜面の斜度に対してカラダを適応させるために必要なフォーム、それが「外傾姿勢」です。
ターンでは「外足荷重が基本」。外スキーに多く荷重するためには、骨盤をなるべく斜面に対して平行に近づけることと、外脚は股関節の外転(開脚)動作、内脚は股関節の内転(閉脚)動作を同時にすることが必要です。
両脚の長さは等しいので、体軸だけ内側に傾けると内スキーに荷重しやすくなってしまいます。
体幹を側屈して「外傾姿勢」をつくると、骨盤が内傾してしまい、外スキーへの荷重がしにくくなるので、「外傾姿勢」は体幹ではなく股関節主動で行うべきです。
脚を開く動作=股関節の外転動作に関与しているのが、股関節の外側深部にある「中殿筋」になります。
手軽に出来る中殿筋のエクササイズ
中殿筋を活性化し機能性を高める一番のオススメは「膝を曲げた状態でのサイドブリッジ」エクササイズです。
中殿筋の筋力強化をメインに考えるなら、横向きに寝て上の脚を開脚させる「ヒップアブダクション」エクササイズでも良いのですが、中殿筋は他の筋肉との連携を図ることで片脚支持バランスの向上などに繋がる「機能性」を高めることが出来るので、サイドブリッジエクササイズの方がスキーヤーにはオススメです。
左右同じ時間あるいは同じ回数反復してみて、左右差を感じるようであれば中殿筋の筋力や機能的に差があるはずです。ターンの左右差と一致していれば、間違いなく中殿筋をトレーニングしていくことが重要となります。
少し強度を上げたい方は、上の脚を開脚-閉脚すれば両サイドの中殿筋のトレーニングが出来ます。
まとめ
「中殿筋」は斜度に対する適応に重要な筋肉です。中殿筋を鍛えることは大切ですが、力を発揮しやすい状態にすることも大事です。
筋肉は短くなることで力を発揮します。
中殿筋が固い=短縮しているので、力の発揮がしくい状態になっています。股関節周りが固い方は、かなりの確率で中殿筋も固いはずなので、中殿筋を収縮させるためにも、中殿筋のストレッチもとても重要となります。
オフシーズンのトレーニング前、シーズン中の滑る前(宿やゲレンデなど)に中殿筋の動的ストレッチをして、その後に中殿筋を活性化させる(アクティベーション)エクササイズを行うと中殿筋が機能しやすくなります。
【参照エビデンス】
Gluteus Medius Muscle Activities According to Various Angle of Mediolateral Ramp During Cross Walking and One-leg Standing 2017
http://www.jkspm.org/journal/view.html?uid=709&&vmd=Full
Electromyographic Analysis of Hip and Trunk Muscle Activity During Side Bridge Exercises in Subjects With Gluteus Medius Weakness 2020
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33378740/
S-CHALLENGE Training Program Works
代表/フィジカルトレーナー 飯島庸一
S-CHALLENGE Training Program Works 代表/フィジカルトレーナー
ファンクショナルトレーニングと筋力トレーニングを統合したトレーニングメソッドで、アスリートやスポーツ大好きな社会人クライアントの動作と機能を高めるサポートを展開。日本スポーツ協会 公認アスレチックトレーナー(JSPO-AT)、全米スポーツ医学アカデミー 公認コレクティブエクササイズスペシャリスト(NASM-CES)