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COLUMN  飯島庸一の「思惟私考」

COLUMN: #0012 アルペンスキー選手に有酸素能力は必要なのか?

2017年01月23日

 

時々サポートしている選手たちやクライアントさんから、「アルペンスキーって、レースで滑る時間は短いのだから、オフトレで有酸素能力高めるトレーニングは必要なのか?」と質問されます。


確かに、アルペンスキーの場合、レースで滑る時間は1分〜1分30秒くらい。長くても(遅くても)2分ちょっとの運動時間です。アルペンスキーという運動は長距離走の様なエアロビック運動ではなく、800m走〜1000m走の様なハイパワー〜ミドルパワー中心のエネルギー代謝をする運動と言えます。


これが、エネルギー代謝におけるアルペンスキーの競技特性です。ハイパワーやミドルパワーがアルペンスキーの競技特性であれば、「さほどエアロビックトレーニングをしなくても良いのでは?」と選手やクライアントさん達が考えるのも納得出来ます。


しかし、アルペンスキーヤーを本質的に強化していくことを考える場合、「競技特性に関連した能力」という視点だけではなく、下の3つの視点からも考えていく必要があります。


・競技特性を支えるための基本的な運動能力強化

・競技生活をする上で必要なコンディショニング

・競技特性を踏まえたリスクコントロール(障害予防)



□競技特性を支えるための基本的な運動能力強化

1-2分の運動時間ということは、エネルギー代謝としては有酸素ではなく、無酸素性の運動(非乳酸系&乳酸系)ということになります。しかし、無酸素性の運動といっても、エネルギー発揮により生成された乳酸を酸化還元して、再びエネルギーにリサイクルするためには、十分にカラダ全体に素早く酸素供給出来る能力が必要です。


□競技生活をする上で必要なコンディショニング

有酸素能力が高いと、「寒冷耐性」「暑熱耐性」が高く、季節の変化に順応しやすい。よって、オフシーズンおよびシーズン中、沢山練習をすることが出来ます。またスキー場は高所にあるため(国内で1000-2000m、海外だと4000m近くの高所にあるスキー場も)、生活するだけで安静時脈拍が高くなりやすい。高所環境下で十分な休息なく繰り返し練習すれば、疲労回復が間に合わず、十分なエネルギー供給が出来なくなります。


□競技特性を踏まえたリスクコントロール(障害予防)

同じ運動をした時に高い心拍数の人の方が、高い運動強度で運動していることになり、疲労度は高くなります。疲労した状態で滑れば、必然的に集中力低下・反応時間の低下に繋がり、怪我のリスクも高まります。


これらの3つの理由で、アルペンスキーヤーもしっかりエアロビックパワー向上のための、有酸素運動をする必要があります。


因みに、全日本スキー技術選手権で活躍している吉岡大輔選手は、高校時代のナショナルチームの体力測定をした際に、VO2max(最大酸素摂取量=有酸素能力の指標)は60mlを超えていました。この数値はマラソンランナー並の有酸素能力です。凄いですね。吉岡選手の活躍の秘密かもしれませんね。

 

 


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